
ガウン ¥811,800(参考価格)/SAINT LAURENTBY ANTHONY VACCARELLO(サンローラン クライアントサービス) ジョン ガリアーノの1995年秋冬コレクションのアーカイブのドレス/ALEXANDER FURY ARCHIVE ヴィオネのヴィンテージのブレスレット/PAUMÉ LOS ANGELES(paumelosangeles.com)
私は80年代から古着を常に着るようになったが、その頃は「ヴィンテージ」という言葉と服は結びついていなかった。ヴィンテージと呼ぶべきものはワインや車であり、服はそうではなかった。
私は子どもの頃からおめかし遊びが好きで、箱の中から大叔母ヘレンが持っていたポワレのコー トや、細かいプリーツが入ったオパールカラーのフォルチュニのドレスを引っ張り出しては身につけていた。ついでに兄弟たちも着飾らせ、クチュール風のポーズを取らせながら自分もそこに交じってショーの一場面を再現したものだ(母は60年代や70年代に自分では着なかったこれらの服を、どうにかして私たちの暮らしの中に残しておきたいと思ったのだろう)。とはいえ、こうした遊びがいつまでも続くことはなく、やがて私はさまざまなフォルムと物語に満ちたファッション誌を端から端まで参考にすることで何とか自分を満足させるようになった。
だが、懐かしのドレスやケープ、コートの輝きは、感情を揺さぶる言葉のように私の中に残った。70年代後半、オックスフォード大学に通っていた私はファッションにお金をかける余裕などなく、ロンドンのブランド、BOY LONDONのパンクなパンツを古着屋で買ったチャイナ風の刺繍入りガウンと合わせたりしていた。当時、私が掘り出した一番のお気に入りは、おそらく1930年代に作られたシトリンカラーのなめらかなバイアスカットのドレスで、社交パーティーでは皆が着ていた大きなパフスリーブのふんわりとしたタフタのドレスには見向きもせず、そのドレスばかり着ていた。
言うまでもなく、当時の古着屋は宝石が眠るアラジンの洞窟にも負けないヴィンテージの宝庫だったが、そんなものを欲しがる人は誰もいなかった。だが、勇敢で美しい大叔母ヘレンの影響で、私も彼女のような格好をしたいと思うようになった。大叔母は枝のように華奢な反逆者で、芸術家たちのミューズであり、第一次世界大戦時代のロンドンで活躍した先駆的な女性参政権運動家でもあった(フォルチュニのドレスやポワレのコートとともに、私は大叔母のタフタのフロックコートとストライプのベルベットで作られたすばらしいバイアスカットドレスも保管していた)。
