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投票メンバーの内、アジア人は4%ほど
今年はまさに“スタートの年”

──ヒロイズムさんがLAでキャリアを重ねる中で、仕事のポジションはどう変わってきましたか?

ヒロイズム:サラリーマンじゃないので、わかりやすい立場の変化はないんですけど、「セッションをしたい」って言うと、どんな方もスタジオに来てくれるようになったのはありがたい話ですね。これだけ長い間アメリカで挑戦しているからか、名前の認知度は高くなってきていて、誰かしら僕のことを知ってくれている。それでチャンスができたり、お話をいただいたりすることが増えたと思います。ここ数年は、亀田誠治さんや世界中の数多くのアーティストがコライトセッションをしに来てくれていて、日本のアーティストがスタジオに来て、一緒にセッションできる環境も整っているので、日本のアーティストには、どんどん来てほしいですね。日本で曲を作ることだけが全てじゃないって伝えたいし、普段聴いてる音楽や夢見ている音楽の作られ方を、現場で体験することができますから。

──日本とLAの作曲環境の違いは大きいですか?

ヒロイズム:一番の違いはスピード感ですね。日本はじっくり考えるんですけど、LAだと瞬発力で出てくるメロディーが大事で。それは、日本にいてはなかなか鍛えられない筋肉なんですよ。あと、コミュニケーション能力も重要です。英語はもちろんできないと難しいです。ただ、ever.yでマネジメントしている佐々木“コジロー”貴之くんは、英語がペラペラではないんですけれど、ギターの演奏が抜群にうまいので、セッションに呼ばれたときに、ギターを弾けば現場が盛り上がってハッピーになる。それも瞬発力です。ずっと考えてリフを作るんじゃなくて、パッと弾けるスピード感とセンスが大事だと思います。

──BLACKPINKのLISAのソロ・デビュー・アルバム『オルター・エゴ』のプロジェクトにも関わっていらっしゃいますよね。具体的にどんな形で?

ヒロイズム:12曲目の「ドリーム」というバラード曲に携わりました。最初に送ったいくつかのトラックのうちの1曲を、すごく気に入ってもらったんです。もっとアップテンポのラップっぽい曲だったんですけれど、「サビはすごくいいけど、バース部分がもっとよくなるんじゃないか」ということで、そこからたくさんのバージョンを作りました。でも、結局「韓国のOST(オリジナル・サウンド・トラック)みたいな曲でアルバムを締めくくる、ミッドテンポの曲を代わりに作ってほしい」と……心が折れかけていたんですけれど、最後の力を振り絞って作りました。

──かなり大変な状況だったんですね。

ヒロイズム:アリアナのアルバムの時も同じような状況があり、最後のチャンスの時に悔しい思いをした経験があったので、「これは絶対にやらなきゃいけない」と思いましたね。うちのスタジオにあるウーリッツァーのエレクトリック・ピアノを弾きながら、15分ほどでイチからアイデアを作って、結果それが無事採用されました。

──ヒロイズムさんが現在取り組んでいる【グラミー賞】での活動について教えてください。新しい動きがあるそうですね。

ヒロイズム:今、【グラミー賞】の投票メンバーとして参加していますが、スクリーニングというジャンルの振り分けの責任者もやってます。最近、【グラミー賞】を主催するレコーディング・アカデミーからアジアの新しい部門を作らないかと打診されたんですよ。

──これはどういう経緯で声がかかったんですか?

ヒロイズム:【SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)】でパネリストをしたときに知り合った、ラルフというレコーディング・アカデミーの人にパーティーで「アジアの曲をこんなに作っているなら、なんでアジア部門を作らないの?」って言われたんです。僕からしたら「え、作れるの?」という感じだったんですけど。

──現時点では〈アジアン・ミュージック・パフォーマンス賞〉はないけれど、【グラミー】が将来的にその部門を設立する方向に向かっているということでしょうか?

ヒロイズム:そうですね。ラルフにその申請をしてほしいと言われ、申請するには投票メンバーになることが条件だったんです。去年、Project Asteriの加藤さんとその申請を出したんですけど、返ってきた答えはNOで。「頼まれて申請したのになんでNOなんだろう!」って内心思ったんですけど、ラルフとしては、レコーディング・アカデミー内に「こういうアクションがある」って知らせる必要があったみたいです。部門を作ったら審査する人が必要になるんですけれど、今の投票メンバーの内、アジア人は4%ほどしかいないんですよ。判断するプロフェッショナルが極端に少ないという現状があり、日本人の投票メンバーを増やさないといけないので、そのための普及活動もしなければいけないと思っています。

──日本人の音楽関係者が投票メンバーになれるんですか?

ヒロイズム:エントリーには条件、審査があって、英語でのコミュニケーションも必要ではあるのですが、日本に住んでいてもエントリーできます。とにかく【グラミー】に日本人がもっと関わる必要があると思っています。

──【グラミー】に〈アジアン・ミュージック・パフォーマンス賞〉が設立されたらすごく大きな変化が生まれそうな気がしますね。そこではJ-POPもK-POPも、インドネシアなど東南アジアも対象になる。中南米の音楽が「ラテン」というカテゴリになっているのと同じように、アジア全域の音楽シーンが「アジアン・ミュージック」というカテゴリとして扱われるようになる。

ヒロイズム:そうですね。奇しくも僕自身、LISAの曲を書いたり、XGがグローバルに広がったりしたこともあって、自分自身のキャリアにおいて、ようやく1ページ目に進んだ実感があるんです。音楽出版社との契約も変わりました。このタイミングに、J-POPがグローバルに広がっていくという話題があり、【グラミー賞】の話もあるので、今年はまさに“スタートの年”という感じがします。【MUSIC AWARDS JAPAN】という、日本の音楽をグローバルに発信するための新しいアワードもできる。すごくいいタイミングだと思います。

──契約が変わったというと?

ヒロイズム:ソニー・ミュージックパブリッシングLAという、アメリカのソニー・ミュージックパブリッシングと全世界契約をしたんです。今まで日本人はやってなかったことのようです。これまでオファーはいただいていても、日本と海外の出版のルールの違いがあって、なかなか進まなかったのですが、ようやく世界標準で戦うための基盤となる契約ができたので、それも含めて1ページ目という感じです。

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