【朗読】山本周五郎『日本婦道記 不断草』 名作朗読 作業用 睡眠導入用 女性 オーディオブック 青空文庫 癒し
不断層山本松五郎 1ちょうど豆腐を固めるように です夫の声でそういうのが聞こえ た目を引いて流しただけではただドロドロ した混沌たる豆汁です掴みよがありません しかしそこへ苦を落とすと豆腐になる成分 だけがより 集まるはっきりと形を作るの です豆腐になるべきものとそうでないもの とがはっきり分かれるの ですではどうしても苦は必要なのだ なそれはお屋敷のよい様の声だっ たそうです出なければ豆腐という形は 出来上がりませ ん夫も与一様もひどく真面目くった調子 だっ た菊はその部分だけ聞いたのだが何のため に頭部の固め方などを話し合っているのか わから ず男の方たちは時によると子供のような ことに強がるものだとよく言われているの を思い出しついおかしくなって1人で そっと笑ってい たそれで夫の呼んでいる声に気づかず3度 目の激しい高声で驚いて座を立っ た茶を変えぬか何をしているん だサブロ兵はいきなり怒鳴りつけた とげとげしい刺すような調子だったそして まるで人が違ったような意地の悪い目だっ た菊はあまりの思いがけなさにかッと頭へ 血が登り恐ろしさで危うくそへすんで しまうところだっ たそれが最初のことだっ たかして150日余り口数の少ない静かな 人だと信じていた夫なのにそれから目に 見えて変わり出し た言葉つきは切り向上になり態度は冷たく よそよそしいものになっ たどんな小さな過失も見逃さずトのある 調子で叱りつけ たそして姑までが しばしばもう少し気を働かせないといけ ませんねこんな高人数の家でそれでは困り ますよもっとしっかりしなければ ねそう言って嗜めるのだっ た姑とは両目が不自由だっ たそれも年おいてからの失明で勘が悪く 起きるから寝るまで色々ときえの改造が 必要だっ た気の優しい思いやりのある人ではあった けれどサブロベのことになるとまるできに 道場がなくなっ たそうだもっとしっかりしなけれ ば菊はそう心を引き締め過失をしないよう にできるだけ夫や姑との気に入るようにと
務め たしかしそういう緊張しすぎた気持ちは かって過失をしやすいものである夫の小事 は多くなるばかりだったし菊は神経が 高ぶって眠れないいよかを明かすように なっ た春になってからのあるよ9時過ぎてから のことだったがサブロ兵は急に酒を飲むと 言い出し家になければ買ってこいと明 武の妻として野を買いに行くなどという ことは恥ずかしいし時刻も時刻なので菊は ちょっと立てなかっ たするとサブロ兵はびっくりするような 高声で怒鳴りつけ た何をうろうろしているんだ寝ていたら 起こして買えすぐ行って こいあまりの激しさに菊は仲間中で夫の 部屋を走り出た呼吸が苦しく膝頭がおいた けれどそのままクリアへ行こうとすると姑 との呼び止める声がしたので心せきながら 立ち戻って襖を開け た茨城屋の店は下の辻にあり ます姑とはあちらを向いたままそう言っ たお酒くらいはもう常々用しておかぬと いけません ねこんな時刻になって階に出るのは 恥ずかしいことです よはいと言って頭を下げると涙がこぼれ そうになっ た菊は口の中で詫びながら木に栗から出て いっ た春とは言ってもまだ2月初めの夜はは ひどくいててい た米沢は周りを山に囲まれていて冬が 長い城下町には汚く溶け残った山折があり 昼はむやみにぬかる道が夜になるとその まま凍るのでうっかり歩くと踏み越して足 を 痛める菊は気も上がっていたし慣れぬ夜道 で激しくつまづきくのところを捻挫し た突き刺すような鋭い痛みに思わず凍った 地面へ膝をついた時その痛みと一緒に日頃 の我慢が切れ身よもなく悲しくなって泣き 出してしまっ たナドの蜂や異が来始めたのはそれから間 もなくのことだっ た夫の方から尋ねる様子だっ た3度メカに来た時イは菊をそっと呼ん でどうやら据えとげぬ縁のようだその つもりでいる方が良い ぞと囁いていっ た菊は真っ青になって身をふわせてい た 2 菊の父は上杉家の30人頭で中沢正田優と
言いすでに隠居して長男門十郎に後目を 譲ってい た菊は殿村三兵から八を通して望まれた縁 であっ た殿村は実機組から出た家柄で食も少なく 貧しくもあったが失政の千坂津島に認め られその武行所でかなり思い役目を勤めて い た酒も嗜まず温和で頭の良い将来を食堂さ れている人物だったから父も兄ものりきで 縁組をしたのであっ たそういうわけなのでまだかして半年 そこそこの利は中のものをひどく怒らせ た菊の気づかぬところでいく旅もセシが あった らしいけれどもついにリエと決まっ た私実家へは戻りません菊は泣きながら 訴え たどのようにも足らぬところは直します きっとごに会うように務めますどうでも 去るとおっしゃるのでしたらもうしばらく せめてもう1つきでも大きくださいまし私 きっとおけに召すようにいたします から夫は見向きもしなかった姑とも 取りなしてはくれなかっ たずっと後になってからもその時の絶望を 思い返すごとによくもあの時自害せずにい られたものだと自分で聞はぞっとする感じ だっ た実際は死ぬつもりだっ たけれど も父上のお嘆きを思えと兄に言われたし 自分が死んでは殿村と中沢家の間に救いよ のない間違いが起こりそうに思え た自分のはっても家に災いを及ぼすのは道 ではないそう試案して菊は泣く泣く実家へ 戻っ た鼻の頼りも若葉の眺めも菊には関わり なく過ぎていっ た母親はなかったけれど兄にみよという妻 があって家事は全てに任されていたから菊 は自分のことを始末すれば他に用はなかっ たご苦労をなすったのですもの少しは のんびりとご保をなさいまし し兄嫁はこごにそう至ってくれた父も兄も 務めて気を引き立てるように 話しかけどうかして早く小心を忘れ させようとすす心配りが悲しいほど ありありと見え た梅の上がったある日持って帰ったまま手 もつけずにあった荷を少しずつ片付け始め ていると思わぬところから種袋が出てき た何の種だった かしら菊はその小さな黒い粒を手のひらに 転ばしてながらしばらく考えていたが
やがて通知さだということを思い出し たそうそう母様のご好物だっ た通知さは不断層とも言って時なしに巻き いつでも柔らかい後期のある歯が取れる 殿村の姑とが何よりの好物で これだけは絶やさないようにしておくれと 言いしたので ある体操好きだったけれど今では誰があの 畑の世話をしている かしら目が不自由で勘の悪い姑とのことが 思いやられ菊はつい声をしんでむせびあげ た夫は私を望んでくだすったそれなのに 半年余りの縁で去られたのはなぜ だろう私がふつもで気が疎かったせい かしらあのように急にお希少が変わったの もただ私が気に召さなかったため かしらそれとも他にわけがあるのだろう か思い出すと絶望が迫ってきた 自分がふつかなのだと諦め ながらけれどできるだけの努力をして報わ れなかった数々の事実が記憶に浮かびもう 人も世も分からないという気がして片付け ていたものを投げ出して泣きしてしまっ たすっかり夏になって照りつける日が続い たその世はひどく無して蚊が多かったので 菊はそっと庭出て焼きを入れてい た周りははぎのしみでその向こうに父の今 が見え話し声がしてい たそうだはや様が来ていらし たそう思いながら聞くともなしに猛然とし ていると殿村というのが耳につい た菊はドキッとして耳を済まし た常々千坂どの福神の男だからおそらく ただでは済まぬ でしょう今考えると利益したことはかって 幸いでし た幸いと申しては悪いがやっぱりそうだっ たのかな 少し様子が落ち着かぬとは思っていたのだ がただではすみませ んイが仕切りに強調し たこれは相当に思い切った処置があります きっと利益していて良かったと思い当たる 時が来ます よ聞には何のことか分からなかったしかし 何か重大なことが起こった らしいそして殿村にもその類が及んでいる と 見える一体何事かしらんと菊はにわかに心 が騒ぎ出し た真相は間もなくはっきりし たそれは失政千坂津島はめ井部主菅長屋 兵庫清の芋川平林という7人の獣心が連盟 してご主君春のを共用したという事件で あっ
た 3上杉家の若主君男性大出春は高鍋班秋月 家の次男に生まれ実際の折上杉容子に入っ た非常に英名の立ちで家督を継ぐとともに 重役のうちから竹prin三のど吉正の 2人を抜擢しかなり思い切った反省の改革 を始め たところが獣心たちの中にその改革を心 よからず思うものがいてとかく家中に円満 を描くところが たその人々がご実家状に余る所場を持って 春のに 迫り竹のど一等の面と政治復旧とを共用し たので ある重心が7人揃ってのことだし春のりは まだ若く一時はどうなることかとあまれた が果よく戦を制して重心を抑えついに大事 に至らずして沈めることができ た菊が全てを知ったのは彼らの罪とが 決まってからだっ た知高津島と井部主は地業半言隠居 平門菅田芋川信淵 服その他の3人はの上に300国召し上げ ということであるそしてことに座して耐震 した人々の中に殿村三兵もい た彼は自ら淵を返上して耐震したそう だ兄の門十郎が話してくれ たなんでも立山の二件にシの農家がある そうでロボをそやけ自分はすぐに大国する という話 だ今にして思えば不安になったのは不幸中 の幸いだった な菊は黙って聞いているうちになぜとも なく殿村にいた時のある日のことを 思い出し た豆腐を固めるには苦が必要だと言ったの 言葉で あるその時は千坂津島の子与一清孝が逆に 来てい た2人で長い間話しているうちにそういう 部分だけ聞こえ た菊はわけが分からずただおかしく思った だけであったが今ふとそれを思い出すと 同時に何かしら強く胸を打つものが感じ られ た苦を入れると豆腐になるべきものとそう でないものとがはっきり 別れる夫はそう言っ た理由は分からないけれどそれはどうやら 今度の事件に関わりを持つ言葉のように 思える菊はにわかに胸苦しくなり出し たどんな意味なのだ 夫は何を言おうとしたの だろうそうだ夫の様子が変わり始めたのも あの頃からだっ
たもし やもしや夫は今度の事件の起こることを 知りその結果を知っているためにそして妻 にその類を及ぼしたくないために利したの ではないだろう かそう考えると思い当たることが 多いそうだそれに違い ない菊はそう思うとともに自分は殿村を 出るべきではなかったと気づい たその世父の前へ出た菊はこれから殿村の 老母の元へ行きたいとを言い出し た私甘になるつもりでおりましたけれど甘 になったつもりで五老婆の行末をおみとり 申したいと存じ ます父が驚くより先に起こったことはその 目の色でわかっ た菊は決心の硬さを示すように父のその目 をがっちりと受け止め たお前には と父は決めつけるように言っ たそうすることが中沢のカにどう響くか わかる か私は一旦この家から出たものでござい ます甘になるか世に頼りなご老母を見とる かいずれにしてもやがてはこの家を出て まらなければならぬ体です父上様お許し ください ましならぬと申したらどう する菊はさっと青ざめたそして苦しそうに 目を伏せながらきっぱりと答え た私義絶をしていただき ます父の拳が膝の上でブルブルと震えるの を菊はやっと自分を支えながら見守ってい た菊は父から感動されたそしてわずかな 着替えの包みを持ちある日たった1人で 静かに家を出ていっ た尋ねる先はすぐに分かっ た城下町から南にあたる続きでその家は二 件と呼ばれる村の名主だ たその家のあは長沢市左衛門と言って殿村 とは遠い円歌になってい た電池三輪も多く持っているし広い屋敷の 中には二胸のはやがあり人を使ってかなり 盛に米沢折りを出してい た菊はある時にあった包まずにすっかり 事情を話し老母の見取りをさせてもらい たいと頼ん だでも不になった私ということが分かり ましたら母様はきっとご承知なさらないと 存じ ます菊だということは内密にしてどうぞ よろしくお頼み申し ますあなたはこの老人をお泣かせなさる 一門は本当に目頭を吹い たよろしございますお願い申すのはこちら
でございますどうか面倒を見てあげて ください まし必ずあなただということの知れぬよう にいたします からあこれで生きる道ができまし たありがとう存じますと言って菊もそっと 目を押しっ た 死殿村のロボは別棟になっている陰居所に い た前には主へ続く庭が開け後ろはずっと 松林だっ たクアにはその松林を通して引いたから 絶えず成立な水が先々と溢れてい た一左衛門に伴われて隠居所へ行った時姑 とは座敷の端に座って1人内を動かしてい た菊はその孤独な寂しい姿を見るなりぐっ と熱いものが込み上げてくるのを抑えかね た ようやくお前様のお世話をしてくれるもの が見つかりまし た一門はそう言いながら菊を促して絶え 上がっ たこの社のもので名はおと言い ます親兄弟のない独り身で気の毒な娘です からどうかお目をかけてやってください ましそれはそれはおかわいそう な姑とはこちらへ膝を向け買え探るような 表情を見せながら言っ た私もこの通り目の不十な体です色々面倒 であろうがどうかよろしくお願いします よもったいないおせでございます秋と申し ますふつもどうぞお頼み申します 気づかれてはならぬと思いつぶやくような 声でそう言いながら菊は濡れ縁へぴったり と額をすりつけ た市左衛門はそばで目をうませながら 仕切りに頷いてい た明る朝早くまだ薄ぐらいうちに起き出し 菊は隠居所の横に開けている畑の住行って 持ってきたトさの種を巻きつけ た二十歳の後ろの松林に濃い朝が降りてい てその木の間を仕切りに小鳥が泣きながら 飛び移ってい た宝城で あろうよく通る美しい根々がキンキンと林 へこだまし家計を走る水のさき飛ばして どんな山奥へ来たかと思われるほど感じ たる気持ちに誘われ た菊は巻きつけた種に心を込めて祈っ たどうぞ1粒でも良いから目を出して おくれお前が芽生えたら私が修様のおそば にいられる証だと思い ます そして彼女の新しい暮らしが始まっ
た大きな不幸にあったためか姑は前よりも 勘が鈍くなっているように思え た食事こそどうにか1人で済ませるけれど その他立位につけ節につけ夜中にさえも菊 の海造がなければ用の足らぬことが多かっ た 何よりも暗示たのは自分だということを 感づかれることだったがそのためかして どうやらその心配もなく殿殿と気やすく 呼びかけるしこちらのすることは何でも 喜んで聞いてくれ たこれならもう大丈夫であろうそう思い 始めたある日彼女は畑の隅で唐さの芽吹い たのを見つけ たあやっぱり思いが通っ たそう思うと同時に熱いものが込み上げ 悲しいほどの喜びで胸がいっぱいになっ たほとんど全部の種が芽ばえたと見え 小さな柔らかい浅緑の双葉がびっしりと土 の表をうめて いる1つもからさずに育てよ菊はそう誓い ながら遠さの根を下ろしたように自分の命 もこれでここに根を下ろしたと思っ た暮れ方の悲しげなひぐらしゼの声を聞き とめてああもう秋だと思ったがそれから どれほども立たぬのに夏のうは見えなかっ た林の中の松のに絡みついたの歯が燃える ようにもみじし始め夜の空を渡る風の根も いつかしら寒々として間近に来ている冬を 思わせる日々となっ たそうしたあるよのこと菊は初めて統治さ を取って食前にのぼせてみ た姑は一端でそれとた らしいいつもは表情のない顔がにわかに 引き締まりふと手を休めてじっと遠くの 物音を聞きますますような姿勢をし た菊はドキっと胸を疲れ た姑とのそのような姿勢はかつてないこと だっ た気づかれたのではないかと思っ たしかし やがて姑とは静かな声で言っ たこれは通知さです ね はいこれは普段層とも言うそうで私の 何よりの好物ですよ普段層とは良い名では ないか立つ時なしいつでもあるというの ですね普段そう随分ぶりでで た起きに召しまして嬉しい存じ ます菊はほっと息をつきながら言っ た柔らかい歯でございますからご委居様に はおよろしかろうと思いまして種を持って まいりました土がよく会いましたと見えて たくさん生えております からでも雪にはどうでございましょうか
冬のうちもわで囲えば大丈夫ではあろうが 日溜りへ移してやるがいいでしょう ねそう言いながらも姑とはいかにも鉱物を 楽しむように下の上でまろばせては統さを 味わい続けてい たその世随分吹けてから松林の奥の方で しりに狐の声がしてい たあるよ人よ嵐が凄まじく吹き荒れて去っ た 朝明け家の周りは散りしいた内場で いっぱいになってい た色も形も様々だし手に取ると目も覚める ような美しい歯がたくさんにあっ たあまりの見事さに熊手を持ったまま 立ち尽くしている と 早くからせいが出ますなと言いながら 市左衛門が近づいてき た 5五老峰に届け物があってそう言って 市左衛門が陰居所へ通った後菊が庭先の 内場を書いている とちょっとここへ来ておくれ と姑の呼ぶ声がし た彼女はすぐに手を洗っていっ た庭を出ていく市左衛門の後ろ姿をちらと 見ながら座敷へ行ってみると姑とは一通の 風船を前に置いて待ってい たこの手紙を読んでいただこうと思っ て はい 今一左門どのが届けてくだすったのです せがれから来たフミ ですロボはそう言って静かに風船を押して よこし た菊はさっと青くなっ た夫のフで ある何者にも変えがたいただ1人の夫の 描いたフである懐かしいとも悲しいともも 言葉では言い表しがい感動が胸へ突き上げ 取り上げようとして差し出した手指は ブルブルと震え たどうしだ姑とがもどかしそうに言っ たはい ただいま菊は懸命に自分を抑えながら 震える手でようやく取り上げて風を切っ たその手紙は越前から出されたものだっ た菊は全く夢中で読んだ何が書いてあった かほとんど理解することができなかっ た吹いても吹いても溢れ出てくる涙とも すれば喉を塞ぎそうなおえそれを姑とに 悟られずに読もうとするだけで精一杯だっ た姑も袖で目を抑えながら聞いてい たそして読み終わった後もしばらく我が子 のおかを負うようにじっと息を潜めていた
がやがて目を押しいら また後で時々読み返してもらい ましょうそこの仏壇に備えておいて くださいとそう言った菊は言われた通りに したが仏壇へあげるともうすぐから自分 1人で読み返したいという激しい欲求に 取り憑かれてしまっ た何も分からずに夢中で読みごたえ 1度はっきりとたどってみ たいそこには夫の吹きがある夫の 呼びかける声がある 何かしら自分に関したことも書いてあった ような記載 する部屋の出入りにもすぐ目は仏壇へ 引きつけられ た夜中に目覚めて今こそと思うことも度々 だっ たせめて母様がもう一度嫁とおっしゃって くだすったらそう願いもした けれど老母はそれきり手紙については何も 言わなかったし菊にもついに盗み読みを する決心はつかずにしまっ たその年が暮れて開けると間もなく菊は昼 のうちだけこの家の羽場へ子に出ることに なっ た阪上杉春のの新しい政治が農産業の増進 を首としていたし企業はその中でも重要な 1つだったから姑ともご政治のご主意に 叶うように進め た菊にはそれと別に夫の帰ってくる日まで できるなら人の厄介にならないで姑とと 自分の整形くらいは稼ぎたいと考えたので ある 市左衛門は笑って見るよりは骨登れる仕事 ですからとはめはあんでいたが菊の懸命な 様子と目に見えるほどの覚えの確かさに だんだんと心を惹かれ改めて腕の良い織り につけて本筋の仕事を教えてくれるように なった その年は花も見なかっ た朝は暗いうちに起きて姑とと自分の食事 を済ませ後の始末をして羽場へ 出る昼に戻って2人の昼を作り終わると すぐにまた引き返して いく夕暮れに帰って晩の食事を取りその後 を片付けると溶きもや縫い物洗濯などの こごました用事が待って いる夜中には決まって姑との世話に2度 ずつは起きなければならなかっ た春の去ったのも夏の行くのも気づかずに 暮らし たその後も時折りサブロ兵から訪れがあっ たいつも居所が違っていて 大阪からのこともあり木からのこともあっ た3年目には四国から中国へ渡り長州まで
行ってまた今へ戻っ たいつも母の安否を尋ねるだけで決して 己れのことは詳しく書かなかったが時折り の文字にそれとなく察しのつくことは誰か の委託によって諸国の産業の模様を視察し ているように 思えるそれが当たらないとしても米沢犯と の縁のつがっているらしいことは疑う余地 がなかっ た確かに何かあるの だ菊は次第にそう確信するようになっ た何かしら世間に知れない真実があるのだ もしそれが事実だったとすればことによる と夫は貴さが叶うかもしれぬそういう希望 がいつかしら心を占めるようになり菊の 日常は少しずつ明るい方へと向かっていっ た立ってみると月日ほど早いものはなく5 年の清掃は夢の間に過ぎ 安6年の秋を迎え た45日続いてけるような雨の降った後 にわかに空が積み上がって松林を渡る風も やや肌寒く感じられる 1日下の宇都宮から音信があって三兵の 描画を知らせてき た手紙は宿のものが書いたので50日余り 前からの病状と今ではどうやら回復機に なって安んずることもないという意味が 詳しくしめてあっ た菊は胸の塞がる思いで読ん だ姑とは聞き終わってからしばらく何か 考えている様子だったがやがて静かに召た 表を あげお前見とりに行ってあげておくれと 言っ た旅で病んではさぞ心細いこと でしょう私はしばらくの辛抱ですいいから すぐに行っておあげお前が言ってももう 意地を張る気遣いはないのだ から菊はあっと息を引いた極めてで自然な 姑の口ぶりには自分をサブロベの妻と認め ていることがはっきりと示されて いるあまりに思いがけないことだっ たそれとも自分が意味を取り違えて聞いた のであろう かすぐには返事もできない菊の混乱した 気持ちを老母はそれと察したのであろう かお前驚いておいでのようだ ね私がお前に気づかなかったとでも思って おいでだった のそう言ってほほと笑いすぐに膝をたして 1くずつ抑えるようなしっかりとした調子 で語りだし たもう言っても良い でしょう5年前のあの時にはどうしても あのようにしなければならなかったの
です殿様の新しいご政治を思い切って行う ためにはその妨げになるご老色方を覗か なければならないけれど誰々がご神性に ついてくるか誰々がその妨げをするか はっきり分かっていなかっ たそこで千坂様はまずご自分からご神性 反対の中心になり殿様には2目の老心型を おまとめになったの ですそこまで聞いた時初めて菊はあの時の 豆腐問答を思い出し たそうだったのかではあの苦の役というの は千坂様のことを指していたのだやはり 意味があったのだと思っ たあの時千坂様が中心にならなければ猫 そぎ邪魔は覗けなかった でしょうとロボは続け たおかげであのようにことははっきりと 始末がつき新しい御星児はどしどしはって い ますサブロ兵がお前を去ったのは自分の 身の上がどうなるかを知っているためお前 やお前の親子様方に類を及ぼしたくないと 考えたからでし たあれも私も心では泣きながら詫びていた のです よでもと姑は言いかけてつと膝を寄せ両手 をそっと差ししたそして菊が自分の手を 添えるとそれをひしと握りしめながら言っ たでも私はねえ菊殿の私はここへ移ると すぐからきっとあなたが来ておくれだと 思っていまし た母 様きっと来ておくれだと私はあなたのお 気象を知っていましたから ね菊はたまりかねて姑の膝へすがりついた ロボは片手でその肩を静かに買い撫でて やっ たすすりあげる菊の鳴き声にわして裏の 松林に少々と空風が渡ってい た 不3年のの安年四坂家には平門の許しが 下がり与一清高には江戸五郎の名がっ た殿村三兵が帰参したのは言うまでもある まい OG
山本周五郎『日本婦道記 不断草』(青空文庫)菊枝は望まれて嫁いだのに、半年そこそこで離縁となった。温和で静かな夫と気の優しい思いやりのある姑だったが、ある日を境に態度が変わって…。
いつもご視聴ありがとうございます。
日本語の文章を読んだり文字を書いたりするのが大好きな元日本語教師です。
青空文庫などのいつまでも心に残ってほしい作品を朗読しています。
次回作も準備中です。
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よろしくお願いします。
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5 Comments
おかげさまでチャンネル登録者1000人を超えることができました。再生回数も順調に伸びています。いつも応援本当にありがとうございます。とても嬉しく励みになります。まだまだ多くの名作があります。皆さまに楽しんでいただける作品を朗読していきますので、これからもよろしくお願いします。
いつもありがとうございます、チャンネル登録者の件 おめでとうございます。
はん
胸にしみるお話を有難うございます。賢くて心念の揺るがないきくえの人様を大切に思う気持ちに感動です。
朗読で聞くことが出来て幸せな気持ちです😊
結果論でなんか収まった感でてるけど、菊さんが自殺してしまってたら悲惨だったよな、それにしてもヒドイ仕打ちをされ泣く泣く実家に帰った彼女の気持ち、我が娘を勘当する事にしてしまった父親の気持ちそりゃあ円く収まった内容かもしれないけどなんやすっきりせんわ