【名作朗読】「失蝶記」山本周五郎【幕末時代小説】

失聴 期山本 清五郎 1今のかず子 様この式はあなたに読んでもらうために 書き ますこういう騒がしい自性であり私は追 れる実の一書不という有様ですから あるいはお手に届かないかもしれません また終わりまで書くことができるかどうか も分かりませんがもしお手元に届いた場合 にはどうか平成な気持ちで読んでくださる よう初めにお願いしておき ます今私のいるところは城下町から一流 ほど離れた山の中でかなり近く宇川の流れ を見ることができます西山での不幸な 出来事あの取り返しよのない出来事があっ てから約10日私は次々と隠れがを求めて 彷徨い歩き3日前からこの家の世話になっ ていますがおそらくまたすぐに出て行か なければならなくなるでしょう居所も人の 名もそのままは書きませんどういうことで 迷惑をかけるかもしれないからですしかし あなたにはおよそ推察ができるように記す つもり です気候はすっかりなみえてきました今朝 早く歩きに出たら山の林の中で石投げの つぼみが赤く膨らんでいるのを 見つけ胸の奥が切なく暑くなるように感じ ながらしばらく立ち止まって眺めていまし た張力を失ってから考えることが心の内部 へ向くようになっていたためでしょう か子供っぽい言い方かかもしれないが赤く 膨らんだ石投げのつぼみを見た時真実胸の 奥に火でも燃え出すような感じがしたの ですちょうど5年前上町にあるあなたのお 屋敷の裏を私は杉中神三郎と話しながら 歩いていましたご存知のように私とは少年 時代からの親友で物心のつく自分から時も 離れたことがないと言ってもいい でしょう年は同じで生まれつきは彼の方が 半年ほど早かったが彼は私を兄のように 扱ってくれまし た2人だけの時はもちろん他人のいる ところでもそしてそれを言葉にも態度にも はっきり表すの です思い返してみると育英官の塾でで3年 一緒でしたがその頃から始まったようで 多分彼の人柄のためでしょういかにも自然 なものですから私の方でも知らぬ間にそれ を受け入れる習慣がついてしまったよう です水の問の年の密着の件から始まった 今度のことでも杉永が常に私の意見を支持 したため我々同士のものの行動はよく一致 し離反者などはも出さずに住みましたこれ

は彼の人に愛される性格と優れた唐突力に よるものという他はありませ ん上町のお屋敷の裏を歩いていた時私と彼 は19歳になっていまし た私たちは法竜尚のことを話しながら歩い ていたの ですご存知のように尚は井田西ゴリラ住職 のによってまかれた反の貧脚であり点は 元より受学政治経済にも詳しくなかなか凡 な人物なのですが自性に対する見識には 打点のいかないところがあるのです一例 だけあげますとそしてこの問題こそ重要な のですが先頃一派の赤侍たちが上位論を 誤って解釈し横浜校にある外人召喚を襲撃 しようと図りました幸い事前に発覚したの で無事に収まったがその時尚は彼らを先導 し残の周囲を変えて与えたのですこの事情 については後で記すつもりですが私は杉中 に向かって放流尚を半から遠ざけるが良い ということを話していまし た2人はどこを歩いているかも忘れていた のですが金家の裏へ来た時杉永がふと 立ち止まっあなたに呼びかけたの ですそこは朝顔の絡まった4つめがきで その柿の向こうにあなたが立ってい た白地に何かの花を染めた人へと主と青の 島のある帯を閉め素足に雑を履いて洗った ばかりの髪を背に垂れておられ たすぐ脇に石投げの若がありちょうど咲き 始めたところだったが私はその花を見る ようによいながら杉永と話しているあなた の姿を盗み見て言いよもなく深い心の 時めきを感じまし たあなたは14歳で世たこそ高い方だが まだほんの少女に過ぎないということは 杉永と話している言葉つきにも身振りや 表情にもよく現れていまし た色の黒い子だなと私はは思いました あなたが笑う時鼻筋に視野を寄せるのを 認めてちのような顔だなと思い今にのっぽ な娘になるぞなどとも思いまし たもちろんこれは生まれて初めて感じた心 のときめきに反抗するためだったの でしょうそんな風にあなたの欠点を拾い ながら一方ではまたこの人のことは一生 忘れられなくなるぞとも思っていたもの です あなたに別れて歩き出すと私が黙っていた ことを不審そうにどうして知らぬ顔をして いたのかと聞きました知らないからさと私 は答えまし た今のかず子だよと彼が言いました俺の家 で2度か3度合っているだろう覚えがない なと私は首を振りまし た本当に記憶がなかったの

です それから5年目の 秋明人の滝でお目にかかるまで私はいつか あなたのことを忘れていまし た変動の激しい緊迫した自性の中で心の ゆりを失っていたためもあるが打ち上げて 言えば杉永とあなたの間に婚約があると 聞いたから でしょう明人の滝でお目にかかった時も私 の心はは少しも騒がず自分の耳がダメに なったことなど落ち着いて話すことができ まし たそれが今はこんなに変わってしまった私 は今朝歩きに出た山の林の中で先きかかっ ている石投げのつぼみを眺めながら6年前 のあなたの姿をまざまざと思い出したの です滝であったあなたではなく6年前の まだほんの少女だったあなたの姿をです そうして心の奥に潜んでいた胸のときめき が燃える痛みのように蘇るのを感じしかし 何もかも取り返し方が失われたということ を改めて思い知ったの です私は杉永神三郎を切りまし たたった1人の友少年時代から誰よりも 親しく血の通った兄弟よりも深く信じ合っ ていた友をこの手にかけて切ったの です私がこの式を書くのはどうしてそんな ことになったのかという理由を知って もらいたいためですここには伊坂の弁解も 歪曲もありません現実にあったことをあっ たままに書きますからどうかそのおつもり で読んで ください 2おえと兵がさいたちょっと起きろお末 ゆりおこされておは目を覚ましたいつも ついている安土が消えて家の中は真っ暗で あり枕元にいるらしい父の姿も見えなかっ た声を立てるなと兵が言っ たどうした のおはさき返したどうかしたのお 様外にがいるよう だおは急に目が覚め根巻きの帯を締め直す としたが手が震えて思うように浮かなかっ た本当に誰か来たのおせが聞い た谷川様を探しに来たの かしらわからないと兵が答え ただがこんな夜の夜中に来るとすれば他に 考え酔わないだろうどうしたらいいの 落ち着けと自閉が言っ た着替える暇はないかもしれないそのまま でかどの影に隠れていろもし人が来たら俺 が大体をするから月を見て委居所へ知らせ に行くんな分かった かそれからどうする のこっちを抑えている間に谷川様を案内し

て逃げるんだ忘れたの かおが答えようとすると兵の手が探るよう に肩を押さえ たおは黙りとの外で人の声がするのを聞い た 落ち着けよ兵がさいたかどの影で待つんだ ぞ慌てる なおは息が詰まりそうになっ たちょっと起きてくれと表の戸の外で男が 言っ た咲かしたのもしだひめに上下からお役人 が見えているここを開けて くれおはかどの影へ身を潜めてから父が なぜそこに隠れると言ったかという理由に 気がついた子whilの人は表だけでなく 裏の方にもいるらしい裏の洗場のとろで物 の倒れる音がししっとする声が聞こえたの で ある兵はアドに火を入れてからどへ降りて くぐり戸を開けたすると強ちを持った模先 に侍が1人入ってきた模しはこの村の明大 な主であるが家の中を人当たり見回して からどを抜けて裏を開けちちを振って何か 言ったがおにはよく聞き取れなかった 変わったことはないと外で答える声がした 出てきたものもないそしてすぐにもしの辺 から若い娘と下Believeと見える男 が入ってきた裏戸は開けたままであっ たどうしたことです主さんと自衛が言った 何のお調べです盗賊でも逃げ込んだんです か神さんや娘がいないようだなともが聞い た2人はどこにいるのかい 女房は里へ行きましたおせも一緒ですが あいつらをご戦技です か探しているのは侍だともの後ろにいた 若侍が初めて言っ た谷が赤というものだが知っているだろう な大手崎の谷川様なら知っており ます兵は落ち着いて答え た私が若い自分下男暴行に上がっていまし た からその谷側がいるはずだと若侍が言っ た素人するものがあったし証拠も確かめて きた隠さず逃げ谷川はどこに いる兵さんともが言った下手に隠し立てを しない方がいいよお前の家の裏に北の殻が たくさん捨ててあるし毎日米のをくことも 分かっているそんな贅沢をするお前さん じゃない誰かよっぽどの人が来ているに そういないんだええ客はありましたと兵が 答え た女房のおふさんが10日ばかり前に来て 今日帰って行きました女房とせはそれを 送って馬沢まで行ったの ですオはそこまで聞いて裏の戸口から

抜け出した 彼らは兵の前に集まりちを突きつけて問答 が激しく互いに声も高くなってい たおはかどの影からどを張って戸口まで 行き外へ出てから立ち上がった家の中で父 がやさしをしてくださいというのが聞こえ おせは闇の中を走り出した洗場の雪を回っ てかきの脇から今は使っていない馬の後ろ へで1段ほど高い大地を登って囲い小屋の 戸口へ近寄っ た春から秋までは開口を買いその後は甘露 ガを加工に使うのだが今年は開口をやら ないので開いてい たおはくぐり戸を開けて入ると泥足のまま 階段を登っ た谷川かは眠ってい た暗くしてあるアドの光が蚊屋の中にある 小机と薄いヤをかけて仰がしている彼の 寝姿をぼんやりと映し出してい たおはかをくぐり膝ですり寄って彼を寄り おこしたかはすぐに目を覚ましおを見て 起き上がったお侍が来ました逃げて くださいそう言ってからおせは急に口を手 で塞ぎゆっくりした身振りでその意味を 伝えたその動作を2度やって見せると 分かったと言いながら立ち上がった来たの は大勢かいいえとおせは首を振り日本指を 出してからちょっと考えて自分をさした娘 が1人と言うつもりだったがかには分から ない彼は手早く着替えながら不審そうな目 をしたお前がどうしたいいえとおは手を 振り今度は指を3本立てて見せた3人かと かが聞いたおは頷いたかは袴を履きながら 机の上のものをまとめてくれと言ったおは 言われた通りにし書き物や筆などを片付け て包み脇にあった旅のへ入れたそして風が 刀を取るのを見てかを出階段を降りて そっと古賀への様子を伺っ た虫の音が聞こえるだけで風のない夏のや はつを含んでひっそりとげに眠っいた裸で は山道は歩けないおはそう気がつき暗いど を探って増量を見つけ たかのわは板垣の釘にかけてある2階で アドが消えかが降りてきたおせがわらじを 吐かせようとしたが彼は自分でとって 素早く縫いつけ た外は大丈夫 か大丈夫ですおはかの手を取り自分の顔へ 当てて頷くのを触らせた急ぎましょう私が ご案内しますおは手を引くことでその意味 を知らせた風は両を背に結びつけて立ち 戸口から外へ出たすると急に左と右にちち が現れた彼らはうまくやったのだ囲い小屋 のことはもしが知っていたので あろうしかしそこへ踏み込むより外へ

おびき出す方が安全だ 彼らは兵が知らせに来るのを待っていたの だろうかそれともおが抜け出したのを知っ ていたのかもしれ ない突然暗闇の中から現れたちちを見てお は悲鳴を上げかは一歩後ろへ下がっ た左にはもと若侍右にはあの娘と下僕 らしい男がいたちちはもと下木が持ってい たキッカーだ なかは若侍を見ていい娘を見てびっくりし たように言っ たこのかず子 さんキッカーと呼ばれた侍は懐から 折りたたんな髪を出しそれを広げて長人の 光にかざして見せ た身神を2枚張り合わせたものに大きな字 で何か書いてあり木川はそこからこれを 読めという手招きをした 風は娘の方を見それから2方ばかり進んで 紙に書いてある文字を読ん だその元は杉永神座郎を闇討ちにした今の かず子殿は周元こそあげていないが杉永と 金手から婚約の中でありその元を夫の敵と して打つ覚悟でおら れる自分は本の殿の海造としてきたが場合 によっては立ちをすると思ってもらいたい キッカー十兵衛 およそこいう意味の文言であっ た読み終わったかは振り返って今のか子を 見 たかず子は散りの皮膚を脱いで下僕に渡し た下は白小thereforeで鉄鉱キハ わらじを吐きたきをかけてい た待ってください近野さんとかは呼びかけ たこれは間違いだ杉菜を切ったのは事実だ がそれには死体がある私は 今かず子はさやごと買い込んでいた脇差し をゆっくりと抜い た長人の火を受けてその等身が冷たい光を 放ちかず子はさを下僕に渡し た私は今その主材を書いているとかは続け ていた書き上げたらあなたに読んでもらい ましょうその上でなお私を叩きと思うなら 潔よく打たれますきかはとかはこちらへ 振り向いた杉永と俺のことはお前もよく 知っているはずだ何か事情があるくらいの ことは想像がつく だろう谷川さんは耳が聞こえないから何を 言っても無駄だろうがとキッカーが言った 家中の情性がこう混沌としていてば命も 弁解も役には立ちません事実あったことで 是非の判断をする他はない でしょう残念だが死んだ杉永さんのために も私は近野さんに女性をするさあ抜いて くださいそう言ってキッカーも刀を抜い

ただめか私の言うことは聞けないの かかはキカを見か子を見 たどうしてもダメなの かどうして も今のかつ子が前へ出 たおと さんとお末が絶叫した動くなとキッカーが おに刀を向けたその時かが木川へ抜き打ち をかけたかず子が踏み込んでき木川は 大きく後ろへ飛び去ったかは囲い小屋の 戸口へ引くと見えたがそのまま板壁を背中 でこするようにして小屋の後ろへ回り込ん だこっちは引き受けたとキッカーがわめい たそっちを下げ近野さんわめきながらキカ は小屋の反対側へ回りかず子はかの後を 追ったもしと下僕もちをかざして走って 行きおは家の方へではなく小屋の背後に ある丘の松林のの中へ駆っていっ た 3今のかず子 様あの夜からちょうど12日経ちどうやら 気持ちも静まってきまし たあの夜のことは全く思いがけなかったし 侵害で口惜しくてならなかったキッカー 十兵衛は杉永や私たちの同士ですあなたが 誤解されるのはやえないとしても彼が事情 を察しようとしないのはなかったあの時私 は一十べも切ってくれようかとさえ思った くらい ですしかし今はそうは思いませ ん私はここへ落ち着くまでに色々な世評を 聞きまし た私があなたに思いをかけていて恋の恨み で杉永を闇討ちにしたというのです馬鹿げ た噂だが常智の話となると人は信じ やすいおそらくあなたも十兵衛もその噂を 信じそのため私を杉永の敵と思い込んだの であろうだとすればあなたや十兵衛を 責めるわけにはいか ないそう考えてからようやく私が気持ちが 落ち着きまし た私は今山の中にい ます兵の娘のお末がついていて身の回りの 背をしてくれますから別に不自由なことは ありませんおせには家へ帰るというのです がどうしても離れようとはしませんうへ 帰ってもおさんがどうなっているかわから ないというのです私にもそれが何より 気がかりです自衛は昔の恩義のために私を かまってくれただけで彼にはいさもとめ られる筋は ないもしも自閉野師が罰せられたりする ようならあなたから取りなしていただき たいあなたならそうしてくださると思うの で折り入って私からお願いしておき

ます式を続けるにあたって密着を巡る家中 の論争は省略しますそこに今度の出来事の 原因があるのですが要約すれば機能か砂漠 かということで荒まのことはあなたにも 分かっていると思うから です私と杉中とは初めから大勢復興開国の 方向に動いていましたそうしてキッカー 10兵あずさ旧や高安之らの他24人の 同士を集め髪型と連絡を取って全般の意見 をまとめるために手分けをして裏面工作を やっていたのですなぜ裏面工作をしなけれ ばならなかったかと言うと仙台犯が常に 警戒の目をそらさず住職方に絶えず圧力を かけていましたし同時にまた放流王将に 先導された砂漠派の者たちにもよほど用人 しなければならなかったから ですこういう大事な時に私は科のため張力 を失い同士の人たちから脱落してしまい ました多分ご存知 でしょう一昨年の2月磯部の砂浜で大砲の 死者をしましたそれまで犯には張れのきの 方しかなかったのだが日たちの何が思考 から初めて中絶の大砲を譲り受けたこれは 我々同士の本によるもので譲り受けたこと は極秘であり死者もまた極秘に行われまし た住職型の一部はもちろん承知だったが これも直接には関わりを持たず見て見ふり をしていたのですがこれも先代犯の地目を 恐れたからで我が班がいかに左右の勢力の 中でもいていたかという霊性の1つだと 思うのです その日磯部へ行く前に私は杉永とこんな話 をしましたどうしてあの人と言をしないん だと私が聞きました婚約してからもう 足掛け3年くらいになるじゃないか彼は 口米団を吹くように唇を丸くしました何か 言い淀む時の少年時代からの癖でそうする とひどく子供っぽい顔になるのです親たち にもそれを言われるんだがと彼は答えまし た今はそういう気持ちになれないんだ何か 故障でもあるのか故障というわけじゃない こう言ってしばらく口をつみそれから私の 目を避けるようにしながら続けました こんな時代だし結婚を急いでかず子に不幸 な目を見せたくないん だ私は黙って杉永を見返しまし たこの間から考えていたことなんだが彼は ゆっくり言いまし た俺は 一層今日へ登ろうかと 思う今って何を する王制復興は海国を伴わなければなら ないこれは兼ねてから谷側が主張していた し俺もその通りだと 思うだが現に本能を唱えているものの大

部分は上位問題を親柱のように信じ込んで いる 下田条約が結ばれて以来すでに欧米諸国の 多くと通称関係を持つようになった現実に はもう外国しているのだしこれは国家と 国家との公約であるにも関わらず王制復興 の中に上位論が強い軸となっていることは 危険だいい大量を切り安藤閣老を切った ような暴力が王制復興の意に乗って上位を 実行するとすれば国家の議失うばかりで なく欧米諸国の同盟によって日本全体の 存亡に関わるような非常な事態を招くかも しれ ない最も重要なことは頂点において上位 神聖がぎせられたという点でそれがもし 事実だとすると酔いならぬことに なる俺は自分でその実費が確かめたいと 杉永は言いまし たてくる情報はそのたに変転しどれが真実 かどれが巨かだんだん区別がつかなくなる ばかりだそうは思わない か話を始めに戻すがと私は言いまし た杉永は1人息子だもし髪型へ行くとし たらなおさら修SAWを早くする方がいい じゃないか杉永にもしものことがあれば 仮名が耐えてしまうぞ毎日のことを思う から出現をする気になれないんだだ俺は 加盟のためにかず子の一生を奪おうとは 思わない修SAWをしろよと私は言いまし た髪型へ行くことは賛成でき ないどうしてだ杉が目を細めまし た上位論は民心を統一する手段の1つだ これは前にも繰り返し言ってある上位と いう名目はそれにするこの国日本と日本人 全体の存在をはっきりさ せるこれまでかつて持ったことのない共通 の国民意識というものがそこから初めて 生まれるだろうしすでに生まれていると 言ってもいい だろうしたって王制復興が実現すれば上論 は撤回されなければ杉永の言う通りこの国 は滅びるかもしれないそれくらいの見識を 持たない人間はないと思う 我々にとって当面の問題は反論を大勢復興 へまとめることだというようなことを 話し合いまし た話の内容はともかくこんなにくどく記し たのはそれが杉永と話し合い彼の声を聞い た最後だったから です私たちはそれから磯部へ出かけまし た 4その場所は磯部から下へ10兆ばかり 行った左の下で集まったものは11人私と 杉がきかはあずさ高はご存知でしょう他の 6人の名はその必要もなし前に述べた理由

からここでもやはり省略し ます大砲は一貫目玉のモルチールという もので急増の放火の上に添えてありました 仕は2人 1人が火薬を詰め大玉を入れ他の1人が 車種の位置に着きました私たちは後件 ばかり離れたところに立ち使用所に注意し てある通り両手で耳を抑える用意をして見 ていました私の右にあずさや左に杉永次に キカがいたよう です少し風のある日で長いさには寄せかす 波が白く泡立ちはかな沖に量をする船が いくつか見えていました大丈夫かなと後ろ で誰かが言いましたあの船に当たりはし ないかなすると2人ばかり笑うのが聞こえ ましたそれはその冗談がおかしかったから ではなくあまりに緊張していたための反 作用だということがあさに分かる笑い方 でし た車種はひを加工に移し内金を落としまし た詳しい説明は書きませんモルチール法は その2つの操作で発射するのです私たちは 両手で耳を抑えましただが頬を発射しませ ん2人の砲手は老廃した様子で加工や内金 を調べていましたが突然何か言い合ったと 見ると耳を塞ぎながらこちらへ逃げてき まし た私は大砲の加工から煙が立っているのを 見こちらへ走ってくる2人の灰色に 引きつった顔を見ました失敗したのだこの ままでは方針が破裂してしまうと思いまし たあの法を失うことはできないそう思い ながら私はもう走り出していたのですそれ を手に入れるまでの苦心と再び手に入れる ことの困難さとが私をそうさせたの でしょうよせ谷川と杉永の先が聞こえまし た危ない戻れ 戻れ私は加工の日を消すつもりだったの でしょうはっきりそう思ったわけではない ただもうその法を失ってはならないという 気持ちで加工から立ちのぼる薄い煙を 見つめながら懸命に走りもう1足もう1足 というところで砂に足を取られて倒れまし たその時方針が破裂したのですどこに 手違いがあったか大砲そのものが粉砕して しまったので原因は分かりません私は 倒れると同時に体全体を大きな板で殴られ たように感じほとんど失してしまいました なければ破片にやられて即死したこと でしょう幸い体に怪我はなかったが両耳の 力を失ってしまいまし た自分の語るのは嫌なものですけれども 杉中を切るという誤ちを犯した理由はこの 2年余日にわたる私の心の状態にあったの でどうしても知っておいてもらわなければ

ならないのです夏の終わりになって耳が 全くダメだということが分かりましたそれ までは一的なものだと思い医者にかかり ながら久しぶりに西洋だなどと呑気なこと を言っていましたその間にも同士の会合が あれば必ず出ていたのですが話すことは できても耳がダメですから議題はいちいち 字に書いてもらわなければならないそれを 読んでから自分の意見を述べるわけで面倒 でもあり時間も無駄にするためやがては その時出た結論だけ読むということになっ たの です そう長いことではないだろうと私は言った もの です俺はしばらくツボさにいるよもちろん そんな呑気なことを言ってる場合では なかった密着があって以来金立鬼の下下殿 と国元にある我ら同士との間で絶えず情報 の交換がありそれについての急を要する 合議が繰り返されていたのです大連合の 監視はますます厳しくなり同士が集まるの にもその度に場所や時刻を変えたり三に 別れて集まり後で代表だけが結果を議する などということもありましたこういう大事 な時ツボさきにいなければならなかったの ですどんなに苛立たしくやりきれない 気持ちだったかおそらく他人には推察も つかないでしょうそれでもまだ回復する 望みのあるうちは良かったもうしばらくの 辛抱だと自分をなだめすかしていたのです が6月下旬になってで医者から藤田と宣告 された時私は気が狂うかと思うほどの絶望 に襲われまし た7月一杯私は家にこもったきりで杉永が 訪ねてきても会わず家族とも没交渉に 過ごしました未練がましい話ですが気持ち がやや落ち着くまでに34日もかかった わけ ですこれで同士から脱落だと私は自分に 言いましたこうなっては何もできない 潔よく脱退 しよう私は杉永を訪ねて同士から脱退する と告げましたみんなの足でまとになる ばかりではなく身体緩急の気を謝ってこと の破れを招く恐れもある残念ながこれで身 を引くと言いました杉永もがっかりした 様子でしばらくは俯いたままでしたが私の 耳が富だということはもう知っていたの でしょう引き止めるようなことは言わず 今後も試案に窮した時は行くから相談に 乗ってもらいたいと書いて記しまし た私は父を解き伏せて家も弟の角次郎に 譲り長く空いていた委居所へ移りました 父母にも弟や妹にも顔を見られたくない

食事も召使いに運んでもらって1人きりの 生活を始めたのです体に故障はないのです から早朝の欲も欠かさず朝と夕方の2回ク になるまで組立の稽古もしましたあとは 読書と集字で余計なことを考える暇のない よう声優に関わらずきちんと日課を守って いたの です冬になってからですが私は後ろの物音 を感じ取ることができるのに気がつきまし た物音でなくとも人の近寄る気配でも 不思議なほど敏感に分かるのです人間が 生まれつき備えている自己保護の本能とで も言うのでしょうか調してうと蝶が迷って くるのも感じ取れるくらいでした後ろに勘 が働くというのは不思議だなと私は自分で 苦笑しましたどこかが服になるとそれを 補うように体の機能が変わるんだ な体そのものが富者になる用意を始めた 苦笑するどころですが私はその時も一度 医者から富士を宣告された時よりも深く 激しい絶望に押ししれました杉永は10日 に1度ぐらいの割りで訪ねてき大抵半時か 一時まどろっこしい質を厭わず話していき ました我々同士の間ではともかく私と杉永 とが中心になっていたため彼の責任は非常 に重くなり同士の間に起こる異論を まとめるだけでもかなり苦心しているよう に見えましたこうして年が明け去年の秋に なって私は思いがけなくあなたにあったの です5 このかず子 様私は今山を歩いてきまし たここへ移ってから初めての外出でおせい が心配しずっと一緒に着いていまし た初めてこの指を書き出してからかこもう 30日になるでしょうか和村にいた時 つぼみの膨らみ始めた石投げがここでは もう先たかっていますし林の中では早朝 からセミがしく泣きかわしています無論耳 に聞こえるのでありません林に反響するの が後頭部に感じられるのですおと私は 振り返って聞きました今セミが泣いている のだろうおは美称しながら頷き手をあげて 周りの子たをぐるっとさしましたがそれ からふと驚いたように自分の耳をつまんで 聞こえるのかという仕草をしましたいやと 私は首を振りました聞こえんじゃない 感じるだけだよここでねと言って頭の後ろ を叩いたのですお末は急いで顔を向け 前掛けで目を抑えるのが見えました今この 式を書き続けながらいつも尺がついて回る ことに気づいて悲しいほど虚しい思いに 囚われました年々さ花は変わらないがと いう古い歌のくなどが頭に浮かび上町の 屋敷の裏庭で石投げの下に立っておられた

あなたの姿とそれから6年経った今の状態 とを比べて人の巡り合わせの頼み方さと いう思いでただため息をつくばかり です私が明人の滝へ通い出したのは去年の 夏の初めからのことでし た母がどこかで聞いてきて例言があるそう だからと進めたの です滝に打たれるなどということは信仰心 があってこそ効果も望めるでしょうが私に はそんな気持ちもないしむしろ新物を憎ん でさえいた時ですから母の言葉もそのまま 聞き流していましたけれども心のどこかに はやはり治りたいという思いが潜んでいた のでしょう4月下旬になり青葉が強い日光 にひらめく様や夏草が風にそぐ景色などを 見ると気晴らしになるだけでもいいと思い 初めて明人の滝へ出かけていったのです そこへは少年の頃2度か3度言ったことが ありますあず明人の裏に立つと谷間に かかる滝が目の下に見え秋になると紅葉が うしいので上下から見物に来るものも 少なくなかった今ではそんな人も稀なよう で滝も昔よりずっと水量が減っていまし た滝に打たれると言ってもご存知の通り 細いものですから鶴の水を浴びるくらいに しか感じませんけれどももないあの狭い谷 で1人気ままに過ごす時間は楽しく心も 伸びやかになるように思われるため雨さえ 降らなければ欠かさず打たれに行ったもの ですこの間にも反の情勢は複雑な変化を 続けながら損耗か砂漠かいずれかに決定す べき時期が迫ってきつつあり杉永は流行り たす同士を沈めるのに困っている様子でし たあなたにあったあの日前の晩に杉が来て 反論をまとめるにはどうしても覗かなけれ ばならぬものがいると言ってマこの名を あげまし たマは古君の側用人で先代の強い 後立山の中で最も頑固に砂漠を主張して いる人間 です杉永がそう決心した気持ちはよく わかりますが私は反対しまし たみとにおける天狗島の騒動のように1人 の暗殺から家中が血を洗うようなことに なりかねないどうしても他に手段がないと しても今はまだその時ではないと私は 厳しく言いなめまし たそんなことのあった後であの日は滝に 打たれながらいつものように気分が 落ち着かず杉永が思いとまってくれたか どうか杉永が思い立っても同士の者たちは どうか重服しないものがあって無謀な真似 をやりはしないかなどと繰り返し考えてい ました多上がったのはいつもより早かった でしょう着物を着袴を吐き両頭を刺すと急

に胸騒ぎがするように感じました多分同じ 問題を考え続けていたため気持ちが不吉な ことの方へ傾いたのでしょう自分では否定 しながら何かことが起こったような不安な 思いに駆られてつい急ぎ足になっていまし たするとちょうど明人の下ありへ来た時 後ろへ何かが襲いかかるのを感じました人 の出てくるはずはないのでそれは分かって いながらそんな気分でいたからでしょう我 知らず刀を抜いて抜き打ちに後ろを 引っぱり大きく散歩飛んで振り返りまし た刀に軽い手応えがあったので刀を構え ながら振り返ると女持ちの扇が2つに切ら れてひらっと地面に落ちるところでした人 の姿はどこにもありません気がついて崖の 上を見上げるとあなたがこちらを覗いて おられたの です失礼しましたと私は言いまし た今そちらへ参ります刀をさやに収めて私 は扇を拾いましたそれは薄く炭でぼかした 時に夕顔の花が描いてあり13のところで 2つに切れ金めで繋がっているだけでした 自慢の腕が臆病の証しをしたか私はそう 思って苦笑しましたそれからあなたのとろ へ行って耳が聞こえないために狼藉をした ことを詫び自分の名を名乗って切れた奥義 を差し出したの ですあなたは笑ってかぶりを振り扇を 受け取ってから何か言いたそうに次女の顔 をご覧になっ たそれで私はやたと手帳をあなたに渡した の です耳がダメになってからいつも持って 歩いているのですと私は言いまし たよろしかったらどうぞそれへおかき くださいあなたは釈をして奥義は落とした 自分が悪いこと詫びは自分の方で言うべき であると書いて手帳を戻されました私は それを読み今のかず子という署名を見て 初めてあなただということに気づき思わず 声をあげてしまいまし たこれはこれは 不思議なところでお目にかかります ね私はウキウキするような気分になって 言いまし たあなたはご存知ないだろうが私はあなた を知っているんですよするとあなたはまた 手帳を取って杉永から聞いて自分もよく 知っていると書かれまた耳の具合はどうか と書かれ た私はどうして出張したかを話し耳は一生 治らないだろうこと家も弟に譲ったしこれ からは耳なしでも生活できるような仕事を 考えているなどということを話したと覚え てい

ますあなたは代わりをして体操美しくなっ ておられた色も白くのっぽでもなくどちら かというとむしろ小柄な方で鼻すじへシを 寄せる癖もなくなったようでした杉永は何 を考えているんですかと別れる前に私は 言いましたあなたからもそうおっしゃって 早く指をあげる方がいいですよあなたは唇 に微傷を浮かべたが何もおかきにはならず やと手帳を返されたので私は別れを告げて 帰ったの です 6滝を目にかかったのが8月12月には 公明天皇が防御され年が開けると近常の 先祖された知らせがあり2月には成長軍が 解かれなど幕府の勢力の衰退と大勢復古の 気運の増大とがもはや避がい時の来たこと を示すようにはっきりと形を表し始めまし た杉永からこれらの事情を聞くたびに私は また自分の耳を呪いましたことを起こす時 が迫っているのに私は脱落者としてただ 防寒していなければならない前世にどんな 罪があったのだろうかなどと思い 磯部の浜の時の飛び出していった無弁別さ しかもそれがとろだったことに改めて自分 をのり救いよのない後悔に身を苛まれる 思いをしまし た3月下旬だったでしょう か杉永が訪ねてきて同士のもが7人ハリに とらわれたということを告げました高 安之助の組で会合はいつも通り極秘に行わ れた その場所がどうして探知されたかわから ない7人は常駐に監禁されているらしいと いうことでした明らかにマの仕事だと杉永 は言いまし た形成が悪天でマが動き出したに違いない 両会には仙台の兵が詰めかけてきたしこの ままでは我々は潰されてしまう ぞこう書いて示文字もいつになくが走って いてことの重大さをよく表しているように 見えまし たやはりマは覗かなければならないと彼は 続けまし たあの時やっておくべきだった今度こそ やらなければならないと 思う私はしばらく考えていまし た辺の城には仙台の力が あると私は念を押しまし た他に手段がないとしてもマをやった場合 仙台がどう出るか大雨連合が黙っているか どうかその点の見通しはどうなん だわからない杉永は答えまし たしかし近いうちに東博の直明が出ると いう噂もあり大雨連合の結束もぐらつき 出したようだ真を失ったぐらいで仙台が

直接行動に出るとは思えないそれは確実な こと かこういう情性の中では確実だと言える ことなどは1つもない だろういずれにせよここはまず断行する ことが先だと 思う私は立ち上がって縁側へ出ましたどう する心の中で私は自分に問いかけまし た 主屋とその陰居所の間に牧の生がきがあり 牧の枝には白っぽい黄色な若葉が揃って 生き生きと伸びて いるまた夏が来るなぼんやりそう思い ながら私は心を決め元の席へ戻って座り まし たそれは俺がやろうと私は言いました マを切るのは俺の役 だいやと私は手をあげ何か描こうとする 杉永を制しまし たマをやったら名乗って出なければなら ない支援だと言って受手して出れば罪は その1人に限られるし先代も干渉すること はできない だろう俺はこんなフグになって他の役には 立たないがこの役なら間違いなくやって みせるこれは俺の役だ杉永は口笛を吹く ように口を丸くつめ庭の方を見たまま考え ていました癖というものは治らないものだ な私はそう思うと緊張した気分のほぐれる のを感じまし た考えることはないもう決まったことだと 私は言いました 帰ったらみんなにそう伝えてくれ ただし辺の同棲は俺だけではつめない みんなで手分けをしていい機会があったら 知らせて もらおうみんなにも意見はあるだろうと 杉永が言いました相談した上でもう1度 来る杉永を送って出ながら私は明人のの滝 であなたにあったことを話しましたその時 まで不思議に話す機会がなかったの です彼はあなたから聞いて知っていたと 見え頷きながら陰気に微傷しましたそれと 分かるほど陰気な美笑だったの です早く言をする方がいいよと私は言い まし たもうあの人も二十歳になるんだろう何を グズグズしているんだ 杉永は私の顔を見て何か言いたそうにし ましたが思い返した様子でそのまま帰って 行きまし たそれから3日目の夕方 です小屋の方の風呂へ入って戻るとあずさ 旧家が訪れてきましたちょうど妹が食事の 前立てをしているところでしたが私は妹を

さらせ食前を押しやって室の用意をすると あずさはまず食事を済ませてくださいと 書いて見せまし たそれで私は前に向かったのですがあずさ の顔色でこれはマの剣だなと直感しました 食事をしている間あずさは仕切りに何か 書いてい私が全を片付けてからあずさと 自分に茶を入れて座ると書いたものを私に 渡しました思った通り辺このこと です 辺はあなたに任せると一同の意見が決まり ましたとそれには書いてあった彼は痕跡6 時から西山の熊川別所で仙台犯のものと 密かしますあまりに早急であなたには不 都合かもしれませんしかし3回には友を 連れず1人で行くということですからやる とすれば絶好の機会ですがやるやらぬは もちろんあなた次第 です私は読み終わってからあずさを見まし た熊川さんは設したの か熊川兵庫は老心の中でも我々が頼みにし ていいと信じていた1人なので私には ちょっと不審に思えたの ですそうではありませんとあずさは書き まし た西山の別所はずっと留守で下木の他に人 はいません部あそこを狙ったの でしょう熊川別所なら我々の監視もあまい そういう腹ではないかと思い ますそれはみんなの意見 か杉永さんもそう言われましたとあずさは 続け たどうなさいますか私は見張役でこれから 西山へ行かなければなりませ ん私はうまし た やろうでは打ち合わせをしますと言って あずさは別所付近の図を書きましたご承知 のように西山は城下のほぼ生男にあたり 住職型の控屋やベッショのある完成な ところです町との間に田畑や林などが 広がってい道は一筋見通しもよく聞きます あずさはその道の一点に印をつけて 待ち伏せるところはここがいいと思うと 言いましたそこからは熊川別所の門が 見えるので合図をするにも都合が良くまた 邪魔の入る恐れもないだろうというのです いいだろうと私は頷きましたそれで合津は どういう風に する私がちで知らせますとあずさは言い まし たこれから西山行って辺が確かに来るか どうかを見定め来たら帰るまで見張ってい ますそして彼が帰るのを確かめたら聴診で 縁を3度書き

ましょう縁を3度な な人の違う時はちちを見せません丸く3度 振ったらマです からそしてあずさは書き加えまし たできたら私も 女性するつもり ですそんな必要はない俺1人で十分だと私 は首を振りましたそれより見張りに謝りの ないようにして くれあずさは筆を置いて静かに抵当しまし た 7夜の10時を過ぎていたでしょうか私は 約束の場所にいて長人の光がゆっくりと 3度縁を描くのを認めましたそこは西山 から来る道が細い流れにかけたどばを渡り 城下の方へとやや北に曲がっている角で道 そばには松が23本と神木の茂みがあり ました私は8時頃そこへ行ったのですが あずさが待っていて別所の方を指さし ながら頷いて見せました辺が来ているのか と聞きますと もう1度はっきり頷き火のついていないち を3度丸く振って見せまし た分かったと私は言いましたあは引き受け たから言ってくれあずさは釈をして去り まし たそれから約1刻農家の若者が2組ほど 通った他には人の気配もしませんでし た月はなく星空だが雲があるので辺りは ほとんど闇です 目が慣れてからも乾いた道がほしく ぼんやりと見えるだけでした風が少し吹い ていてどこからか笛の根が聞こえてくる ようです村里ではおそらくもう祭りの稽古 を始めていること でしょう暗い野面の向こうを見ていると 現実に笛の根が聞こえてくるように思われ まし た鳥鎮の日は熊川別所の辺りに現れ 打ち合わせた通り3度ゆっっくりと大きく 縁を描きました私は深い呼吸をし右手を目 の前へあげて指を開いたり拳を握ってみ たりそれから空を見上げました長人の合図 を見てから初めて気持ちが落ちついたよう で全身に心よい力の充実を感じましたおい せくなよと私はつぶやきました位の立ちが 大事だ ぞ作をてたにかけ汗止めをし袴の桃を絞り まし たこれらはできるだけ入念に時間をかけて やりそれから神木の茂みの後ろへ隠れまし た別所との距離は56丁くらい でしょうまもなく道の向こうにちが見え 小さく揺れながらこっちへ近づいてき ます友が一緒かな

ちちは友が持っているのでないかと思った のですが姿が見えるようになると1人だと いうことが分かりまし た私は雑を脱いで旅になり刀を抜いて2度 3度つぶりをくれ呼吸を整えて待ちまし たマは足早に近づいてきどばを渡ってすぐ 前を通りすぎまし た2件ほどやり過ごしていて私は道へで 後ろから素早く間を詰めながら叫びまし たマカベの ごめんそして振り向くとぼ首のね一等返す 二のたちで存分に道を払いました相手はち を取り落とし何か叫びながら片手を振り よめてガクっと膝をつきました反全体の ためですと私は言いましたどうぞ覚悟を 願い ます相手はなお何か叫び手を振りそうして その手で頭巾をはぎ取りまし たその時道の上でちちが燃え上がりズキを 脱いだ相手の顔が見えまし たそう ですそれ が杉永神座郎だったの です杉永が 私は刀を投げ出してかきおり彼の肩を 抱き抱えましたどうしてお前がこれはどう したことだマこうということだったぞ杉永 は何か言っています私が切りつけた時も 人違いだと叫んだのでしょう俺だ杉永だと 叫んだ何か叫ぶのを私は見たのですから もちろん彼には私が分かったでしょうだ からこそ抜きあわせることもできず俺だ 杉永だと懸命に叫んだに違いありませ んあずさと打ち合わせたんだと私は同点し ながら言いまし たマが密かするということで合津まで決め てあった一体どうしてこんなことになった ん だ杉永は何か言っていますだが私には 聞こえません私は彼の肩を掴み天を見上げ ながら叫びました私の長をおかけますもし 神物がすなら一言だけでいい杉永の言う ことを聞かせて くださいだが皮肉なことに私の刀はやたず 存分に深く急所に達してい杉永はそのまま 絶manしまし た私は彼を抱きしめて泣き謝罪をしまし た少年時代からのたった1人の友最も信じ 合った友を こんな風に自分の手で殺し たみさえ不自由でなかっ たらこの気持ちはあなたにも分かって いただけると 思う私はすっかり我を失い絶息した彼を 抱いたまま泣き続けまし

たしかし長い時間ではなかったふと気が ついて振り返ると西山の方から鳥鎮が5つ 6つこちらへ向かって走ってくるのが見え たの ですあずさ9やなれ1人のはずですが鳥鎮 の数から察するとかなりな人数らしいここ で捉えられてはならないそう思ったので 杉永の死体に別れをいい刀を拾い造りを 探して泣きながらそこを逃げ去るました どういう手違いだろう闇の中を走りながら 考えました考えるまでもなくあずさ旧の 裏切りだということは初めからのことを 思い合いばすぐに分かるはずですけれども 逆上している私にはそんな明白なことさえ 検討がつかずただうへは帰れないという こととマを打つまではないと思う ばかりでし たどこをどう逃げ回ったかは書きませんが 和村の自閉のとろへ落ち着いた時には ようやく裏切りだということに気がついて いまし た高7を売ったのも彼だそれも疑う余地は ない でしょう私は川を剥いだあずさやの正体を 前にして改めて時世の複雑さとその複雑な 家中に生きる人間のそれぞれの心のあり方 を持って探測するばかりでした多分あなた は私があずさに報復するだろうとお考え でしょう私も一時はそう思いましたこんな 無惨な裏切りはないどれほど人間にもこう いう告白な真似はできないだろう杉永の ためにも生かしてはおけないそう思ったの ですが自閉の住居に移ってからそれは違う と考え直しまし た方法こそ残酷極まるものだがあずさも 自分の利欲でやったことではない彼は彼の 立場で最も効果のある手段を取っただけだ 私たちが私たちの信念によって行動する ように彼もまた彼のに従ったまでだ憎むと すればあずさそのものではなくあずさを 動かした砂漠という観念だあずさなどは 問題ではない反の体勢を王制復興に持って いくことが大一 だ杉永にとってもそれが本毛に違いないと 思ったの ですこれで私の式は終わり ますここにはあったことの全てをできる 限りあったまま記しました幸にお手元へ 届いた時お読みになった後でなお私を杉中 の敵だと思われるかどうかめめしいようだ がそれを伺えればと願わずにはいられませ ん 8彼らの来た時おは煮物をしていた油で名 ため干したハをちぎって入れ水と少量の 砂糖と正油で味付けをしてから鍋に蓋をし

焚きの具合を見たそこへ開けてあった 勝手口から2人の侍が入ってきておを左右 から挟んだ騒ぐなと侍の1人が言った黙っ て俺の言う通りに しろオはその侍を見たお前には関係のない ことだとその若侍は言っ た何もなかったつもりで煮物を続けろいい かさあ軍じゃない ぞおせは口を開け何か言おうとしたが言葉 にはならなかった 侍の1人がどを表の方へ行き表の戸口から また3人入ってきた彼らは部屋へ上がり 何か探している様子だったが1人が刀を 持ってどへ降りてきた大丈夫ここにいると 1人が言ったこの刀があるから確かだ丸越 で出かけたんだなのんびりと山歩きがと別 の1人が言った風雅なこと です他の1人が戸口へ行き手を振りながら 何か叫んだすると答える声がしてまもなく 5人の若侍が入ってき狭いどは彼らで いっぱいになっ た朝飯の支度をしているから間もなく帰っ てくるだろうどうする刀を取り上げるば こっちのものだここでやるかいや大事を 取る方がいい2人は中にてその娘を動かす な他のものは外に隠れて帰りを 待とうあずさは用人深いな 谷川かにはどんなに用人をしてもしすぎる ということはないんだあずさは用人深いよ そんな問答をしながら2人を雄のそばに 残して他の8人は古代へ出て行った残った 2人はどの隅へ下がり1人は刀を抜いてお 末に見せた騒ぐとこれだぞとその赤侍が 言ったいつもの通りやっていろ谷川が帰っ てきても変なぶりをするなよその時小で 叫び声がした谷側だと1人が言った押さえ た ぞそして2人は飛び出していっ たこの家の表に30つばかりの狭い空地が ある片側は低い赤土の崖片側は藪で長い こと人が住んでいなかったのだろう夏草の 茂った中に踏みつけ道が一筋赤土の崖の方 から空地へ通じている谷川かはその空地の 中央で彼らに取り巻いていた全く思いがけ なかったらしいかは左の手に腰をやり刀の ないことに気づいて彼らを見回しながら 右手をあげた待てとかは言った俺は丸越だ そうでなくてもこれだけの人数では逃れる ことはできない未練な真似はしないから俺 の言うことを聞いてくれ そんな必要はないとあずさと呼ばれた侍が 叫んだリヒは明白だ やれあずさ9やとかは手を伸ばして まっすぐに相手を指さし た今お前は何か言っ

た俺の耳は聞こえないが何を言ったかは 察しが つく俺に口を聞かせるなこのまま切れと 言ったろうそうだろう あずさこいつに物を言わせるつもりかと あずさが叫んで刀を抜いた俺はやるぞ風は 両手を広げて彼らの中の1人に呼びかけ たキカジベお前はこのまま俺を切らせて いいのかこのまま俺を切ってそれで何か 得るものがあるの かこいつとあずさきやす だ 待てとキカは十兵衛が手でせし たもう逃す恐れはない聞くだけは聞こう何 のためにとあずさが叫ん だきかはみんなも聞いてくれとかが言っ たみんなは俺が杉永を切ったことで俺を 切ろうというの だろう確かに俺は杉永を切ったしかし俺が 杉永を切ったということをどうして知っ たあずさやが踏み出そうとしたキッカー 十兵衛が止めろと叫び2人が左右から あずさを押しとめ た俺が杉永を切ったことはたった1人しか 知ってはい ないとかは続けてい たその男が俺に罠をかけて俺の耳のフグを 利用して杉永を切らせた部こだと手引きを して俺にとっては掛け替えのない友を切ら せたあずさきやすの男だこんなやつの言う ことを聞くつもりかとあずさきやが叫んだ 俺たちはこんなでたらめを聞くためにここ へ来たのかいえいえとかはまたあずさを まっすぐに指さした俺は貴様の罠にかかっ た無の友を手にかけた俺が貴様を憎ま なかったと思うかあずさや俺は貴様を切り たかっ た貴様の五体を寸断してやりたかっ ただが思い直した貴様が俺を罠にかけたの は利欲のためではない砂漠という信念の ためにやったことだあずさ急やそのものの 罪ではないと思ったから だ谷川かはそこで彼らを見回し たこれ以上くどいことは言わない あとはみんなの判断に 任せる旧家の目と俺の目を見比べて くれ今言った俺の言葉に対して旧家が何と 言うか聞いて くれそしてもし彼の言うことが正しいと 思ったら俺を切るが いいまた俺の言うことが信じられるなら刀 を貸して くれ 俺はここ であずさを

切るさああずさやに言わせて くれみんなは木川ジベを見 たあずさとジベが言っ た何か言うことががある かあずさやは刀を取り直したよしとジベが 頷いた谷川さんの刀を 返せ1人がうの中へ走って行きかの刀を 持って戻っ たかは十兵衛の顔を見つめ受け取った刀を 腰に差してから静かにそれを抜い たあずさをして他の人はずっと後ろへ 下がり家の戸口にはおせいが怯えたような 顔でこちらを見守ってい た

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『失蝶記』は、幕末の動乱期に生きる一人の男の内省的な旅を通じて、友情、愛情、裏切り、そして運命の不可避性について探究します。手記の形式を取る本作では、主人公が親友を誤って殺害してしまう悲劇から始まり、その経緯と彼自身の心理的変遷を深く掘り下げていきます。親友への深い愛情と裏切りによる罪悪感の間で揺れ動きながらも、最終的には運命を受け入れ、自らの行いに対する理解と和解を求めます。『失蝶記』は、読者に人間の心の奥深くに潜む複雑さを見せつけ、人と人との関係のもろさと美しさを同時に描き出します。この物語は、失われた愛と友情の価値を再認識させ、運命の前に立ち尽くす人間の姿を通して、深い共感と反省を呼び起こします。

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